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Open Zemi #6 Ryoko Iwase "Infrastructure"

 

 第6回目のオープンゼミは建築家・岩瀬諒子さんをお招きし「Infrastructure」というテーマでお話ししていただきました。岩瀬さんは土木と建築の領域を横断するような設計活動をされていて、インフラスケールのプロジェクトにおいても細部のデザインやマテリアルを追求されている姿勢が印象的でした。今回のレクチャーでは堤防のデザインと道路のデザインの2つのプロジェクトに絞ってお話ししていただきました。

 はじめに、インフラのデザインにおけるベースとなる考え方を語られました。ヨーロッパと比べて日本の公共空間では、法律により手すりや塀などの取り付けが事細かに義務付けられていたり、いろいろな行為が禁止されていたりと規制が多いため、広くデザインされているにも関わらずほとんど使われていない公共空間が多く見られます。しかし、本来公共空間およびインフラはそこで暮らす人々の習慣と切り離せないもので、インフラのデザインは人々の日常を支えるとともに、長い時間をかけて文化を醸成すると言います。

 次に、《トコトコダンダン》という堤防のデザインの紹介がありました。このプロジェクトは、大阪市内を流れる木津川のカミナリ型の護岸の遊歩道と広場空間のデザインであり、既存の護岸が時代の要請に応じてかさ上げや耐震化(=リノベーション)されてきたことから、これまでのリノベーションの過程を可視化するようなデザインおよびサイン計画が施されています。また、育てている人の気配を感じさせる、住民の手入れを誘発するような植栽計画であるため、住民が整備に関わることが可能になっていたり、潮位変動を可視化するような段差およびサイン計画が施されているため、堤防自体が環境を知るための指標として機能していたりします。さらに、堤防自体に座ったり寝たりすることが可能で家具のように機能しており、インフラでありながら公共空間と個人との関係を取り結んでいると言えます。その他にも、スロープをデザインする際に新しく舗装材のブロックを開発し、材料を開発するという形で公共のデザインに関わることの可能性を発見したと言います。このように、従来土木コンサル業者の仕事であるインフラ設計にデザイン監修者として参画したという立場の特殊性と、どのように関わるかをその都度協議しながら進めていったプロセスゆえに、従来の設計者の領分を越えたプロジェクトとの密な関わり方が可能になったと言えます。そして、竣工してしばらく経つ現在もなお地元のNPOと協働して《トコトコダンダン》を使いこなすためのイベントを定期的に開催しており、土木インフラの使われ方が変わると町や人々の日常も変わってくると言います。

 さらに、現在進行中である道路のデザインの紹介がありました。このプロジェクトは、シンボルとしての城がありながら城の風景と人々の活動が切り離されてしまっている街に、歩きやすい歩行空間をデザインするというもので、幹線道路と歩道の間に緩やかな傾斜の擁壁を設けて植栽計画を施し、人々が落ち着く場所を確保しています。また、通常は車道がアスファルト、歩道がブロックで出来ていることが多いけれど、舗装材を逆にして歩道にアスファルトを用いることで、既存の駐車場などの車道に付随した空き地が歩道の延長および広場に見えてくるという提案をしています。さらに、下水道の掘り返しという不可避な工事を逆手にとり、マンホールの位置を手がかりにして工事が起こりそうな場所をプロットして掘り返しをコントロールすることで、下水工事後のパッチワーク状のアスファルトの状態をもデザインしようとしています。

 後半は吉村靖孝教授や会場の皆さんを含めたディスカッションに移りました。まず吉村教授は、岩瀬さんの建築家として行政に介入していき交渉することでルールを変えていく(従来の設計者の領分を越えていく)姿勢のすごさと、オープンな社会系かクローズドなアート系かという建築家の二分法を越えてマテリアルが社会性を帯びるようなデザインを生み出していることのすごさについて指摘しました。また、会場からも多くの質問が出ました。まず「新しく材料を開発するという形で公共のデザインに関われるという話が面白かったが、どのような流れで舗装材のブロックの開発に至ったのか」という質問に対しては「建築設計とは異なり土木設計においては欲しいと思える既製品が少なかったため、業者の方に質問や提案をする中で共感し賛同してくれた方と新しい材料を開発することになった。公共の仕事で儲けるのは難しいが、製品開発のように意外な方法でもっとお金を生み出せるのではないか」と言います。また「インフラスケールのプロジェクトは規模が大きいので、道のデザインのプロジェクトにおける城の眺望という切り口のように平面的に解くことが多いように感じるが、(土木設計における)空間についてはどう捉えているか」という質問に対しては「基本的に屋外の壁に囲われていない領域を空間として捉えるのは難しいので、パブリックスペースをデザインする際には現場で得た印象や現場で考えたことをすごく大事にしている」と言います。さらに「人間の周期的なイベントを想定した(組み込んだ)空間作りは土木設計においても可能か、あるいは作り込まない方がいろいろな活動を誘発するのか」という質問に対しては「季節のリズムや周期的な要素を含み込んだデザインは必要なことで、例えば、一般的に夏と冬にはパブリックスペースの利用が少なくなるので、いかに冬に人を呼ぶか議論しても意味がないし、ヨーロッパのような天候ありきの暮らし方はいたって自然なことだと思う。《トコトコダンダン》でも季節に応じた利用者の増減に対応できるような仕様になっている」と語られました。

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