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Open Zemi #14 nanometer architecture "liquidness"


 第14回目のオープンゼミはナノメートルアーキテクチャーの野中あつみさん・三谷 裕樹さんをお招きし「liquidness」というテーマでお話ししていただきました。社名であるナノメートル(nm)の言葉にこめた意味を端緒とし、様々なスケールを横断する過去の作品や進行中のプロジェクトについてお話しいただきました。


はじめに少し変わったお二人の経歴について教えていただきました。野中さんは遺伝子工学科で大学を卒業後、専門学校を経て建築の道へ。三谷さんは様々な趣味に没頭していた高校生活を終えると、やりたいことを模索するために数年フリーターに。最終的に大学で建築を学ぶ決断をし、数多くのコンペに応募したり、学生団体を立ち上げみんなで小さな建築を施工した経験についてお話しくださいました。


社名であるナノメートル(nm)は野中(n)と三谷(m)の頭文字をつなげたことに由来しています。ナノメートル(nm)という単位は、ウイルスレベルのサイズを表すのに使用されるものですが、ナノ以下の世界はマイクロまでの世界とは大きく異なるといいます。ナノ以下の物質はあまりに小さく、比表面積(表面積/体積)が大きくなるため、物質同士の反応速度が高く、同じ物質でも容易に性質が変えられるそうです。このような考えのもと、ナノメートルアーキテクチャーは、出来上がった材料を分解してから作り出すトップダウン的な手法よりも、原子レベルで分子を組み立てて行くようなボトムアップ的な手法で建築に向き合っています。


最初に紹介いただいたのは、《シロップ》という作品です。この作品は、ルーヴィスが提供する「建築家がある程度まで設計した既出プランから好みの家を選び、それをカスタマイズして建てる、新しい形の新築住宅サービス」である〈新形〉の中の一つの作品として発表されました。住宅の中にリビングやデスク、ベッドにもなるような大きな箱を設置する提案で、様々な飲み物に溶け込むシロップのように住み手がその箱を使いこなし、住み手の生活に緩やかに溶け込むような設計を目指したと言います。


次に、自社オフィスについてお話しいただきました。オフィスはもともとスナックだった場所の居抜きで、スナックの床やカウンターなどを再利用する形でリノベーションされました。床をはがした際に現れた逆梁の上に、一つの空間と捉えられるような箱型の長テーブルを設置し、まるで小さな部屋が浮いているような軽やかさが演出されました。約10mの長さのテーブルは、幅を緩やかに変化させることで所員さんの作業スペースから食事スペース、打合せスペースなど様々なアクティビティに対応でき、人々のふるまいがグラデーショナルに現れます。机に向かって小部屋に入るように作業する時はオンの時間、一息ついて背もたれに寄りかかり小部屋から出た時はオフの時間というように、一つの什器によって人々の気持ちの切り替えをも促します。


また《リニモテラス》という長久手市の公共施設では、住宅に使用される105mm角の木材を使用したり、あえて900mmピッチの小刻みなスケールでリニアな空間を作り出すことで、公共建築の中にみんなが意識を向けられるようなきっかけをちりばめた設計を心がけたと語られました。幅の広い長廊下の左右に設置された居室群はあえて面積を小さくすることで、廊下や外部に様々な活動があふれだし、それらが液体のように混ざりあうことを期待したといいます。


最近発表された《地上の家》という5mの高低差のある土地に建てられた住宅作品は、平屋を宙にあげることで、土を切り出さなくて良い設計となりました。玄関をあえて敷地の奥に持ってくることで植物と住み手の関わりを増やしたり、少ない床面積の中で沢山のモノを収納するための工夫を施すことで住み手が建築を使いこなすような設計を意識したとおっしゃられました。


さらに現在進行中の大阪万博のスタジアム設計では、「困っている木」というキーワードのもと、各地で様々な理由で切られたり折れてしまった木を使用した設計を進めているようです。この「困っている木」という言葉は別の《大湫大杉プロジェクト》を経て、考えられるようになったといいます。このプロジェクトは、豪雨により倒れてしまった岐阜県大湫町にある御神木の大杉を保存するために始まりました。皆でしめ縄が張れる高さである5mまで切り落とし、90度回転させ立て起こしたあと、切り口を守るようにコールテン鋼の屋根をかけるという手法がとられました。町民にとっての心の拠り所となっていた大杉に、もう一度息を吹き込むようなプロジェクトといえます。


後半は質疑応答へと移り、多くの質問が上がりました。質問に応えられる中で、ディテールの工夫、差し色を入れるという意識、新しい家具を買わずとも暮らせるような設計やモノへの意識、その空間での過ごし方を先回りして沢山スケッチしてプレゼンし続ける姿勢など、より深いお話を聞くことが出来ました。また、「『liquidness』という今回の講演テーマに対して、設計では柔らかいのではなく確固たる何か強いモノのデザインがあるように感じたのだが、どのようにスタディし進めていくのか?」という質問に対し、「使い手と建築が交じり合うような、使いこなせるようなきっかけのある建築を作ろうとしている。液体にも硬いものと柔らかいものがあると思っていて、強い形を持ったきっかけから人々に意識や気づきがしみこむようなものを思考する。使い方を意識してスタディしていったときに、ある段階で普通から脱却しようとする。 そこから何かの要素を成長させるような設計は意識している。何もない多目的室ではきっと普通の使い方しか生まれないけれど、何か面白い使い方が生まれるようなきっかけやクセを作りたい。」とお答えになられました。また「幅広いスケールのものを設計されているが、どれも長いリニアな造形が多いと感じた。長い空間設計においての工夫などはどういった場所にあるのか?」という質問に対しては、「長い空間の縁の部分のアクティビティの生み方は意識している。またリニモテラスでは長い空間にすることで環境設計的にも効果があるようにスタディを行った。」と回答されました。さらに「二人で仕事の分担はどのようにしているのか?」という質問に対して、野中さんと三谷さんの能力チャートを見せてくださり、「能力が違う人と仕事をすることが大事。」とおっしゃられました。最後に吉村先生から、「シロップとオフィス、万博と大湫のようにリンクした作品が多いが意識しているのか?」という質問があり、「意識はしていないし、連作として発表するつもりもないが、何か最初に思った直観は意識するようにしている。」と語られました。


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